WordPress Markdownプラグイン比較(追加分)


「Jetpack(Automattic製)」および「WP Markdown Editor(旧名:Dark Mode)」の2つについて、Markdown対応状況や機能、軽量性、Gutenberg互換性などを調査し、先ほどの比較に追加します。

WordPress Markdownプラグイン比較: Jetpack Markdown機能 vs WP Markdown Editor

概要

Jetpack(Automattic製)のMarkdown機能は、WordPress公式の総合プラグインJetpackに含まれるモジュールの一つです。有効化すると投稿やページをMarkdown記法で記述できます。一方、WP Markdown Editor(旧称Dark Mode, WPPool開発)は、Markdown記法での執筆に特化したプラグインで、管理画面のエディタをダークモードにする機能も備えています。以下の比較表に主要なポイントをまとめ、その後に各項目の詳細を解説します。

Jetpack Markdown機能 vs WP Markdown Editor : 機能比較表

項目 Jetpack (Markdownモジュール) WP Markdown Editor (旧Dark Mode)
GitHub Flavored Markdown対応 一部対応 – CommonMarkベースのMarkdown Extraを採用し、標準Markdownにない表組みや脚注などもサポート。ただしGitHub特有のタスクリスト記法など全てを網羅するわけではありません。 不明/基本対応のみ – Markdown記法自体はサポートするが、GFM拡張(表やチェックリスト等)への公式言及はなし。基本的なMarkdown要素の記述・変換が中心と考えられます。
リアルタイムプレビュー なし – 執筆時はMarkdownの生コードを入力し、プレビューは手動で確認します(エディタのプレビュー機能や投稿プレビューを使用)。専用のライブプレビューウィンドウやシンタックスハイライト機能は提供されません。 あり – 投稿編集画面自体がMarkdown用に最適化されており、書いた内容をその場で視覚的に確認しながら執筆できます。ブロックエディタ上でMarkdownを直接入力し、変換後の書式を即座に確認できるため、Jetpackのようにテキストモードとプレビューを切り替える必要がありません。
Gutenberg互換性 ◎ 高い – ブロックエディタ用に専用の「Markdownブロック」が提供されています。有効化後はブロックエディタ上でMarkdownブロックを追加して記述可能で、Classic Editor(クラシックエディタ)にも対応しています。 ◎ 高い – ブロックエディタ環境で動作するよう設計されています。投稿一覧に追加される「Edit (Markdown)」リンクから専用のMarkdownエディタ画面を開き、Gutenberg上でブロックにとらわれずMarkdownで執筆できます。Classic Editorとの併用は推奨されず、過去に非互換の報告もあります。
軽量性(パフォーマンス) △ 単体機能としてはやや重い – Jetpack自体がセキュリティや統計など多機能な大型プラグインのため、Markdown目的だけで導入するとオーバーヘッドがあります。不要なモジュールを無効化すれば負荷を抑えられますが、プラグイン本体のサイズは大きめです。フロントエンドではMarkdown変換後の静的HTMLが表示されるだけなので表示速度への影響はほぼありません。 ○ 比較的軽量 – エディタ機能に特化したシンプルなプラグインです。Jetpackのような多機能さはないため基本的に管理画面での動作のみで、サイト表示速度に余計なスクリプトを読み込むこともありません。ただし有効化すると独自のエディタUIやスタイルシートを読み込むため、管理画面上では多少の追加負荷があります。
更新頻度・安定性 ◎ 非常に高い – Automatticにより月次アップデートが行われており、他プラグインとの互換性も随時改善されています。WordPress.comと共通の機能群ということもあり信頼性は高く、安定して動作します。大規模ユーザーベースがあり不具合にも迅速に対処されます。 △ 低い(フリー版) – 無料版プラグインは2024年以降更新が少なく、最新のWordPressとの互換性に警告が出ています。開発元は有料版の提供に注力しており、無料版のメンテナンス頻度は低めです。不具合報告として、過去にClassic Editorプラグインとの衝突で編集画面が崩れる事例もありました。安定利用には最新版WordPressでの動作確認が必要です。
無料 / 有料プラン 無料 – Jetpackプラグイン自体は基本無料で利用可能で、Markdown機能も無料モジュールとして制限なく使えます。(Jetpack全体としてバックアップ等の有料プランもありますが、Markdown執筆機能は無料範囲内です。) 有料(実質) – プラグイン自体はWordPress.orgで入手できますが、無料版ではMarkdownエディタ機能が使えません(ダークモード切替のみ)。Markdownで記事を書くには有料ライセンスの購入が必要で、年額約50ドルまたは買い切り約90ドルのプランがあります。購入後に初めてMarkdown記法での編集や各種設定が可能になります。
日本語対応 ◎ 対応 – Jetpackは公式に日本語を含む多数の言語に対応しており、管理画面も日本語化されています。実際、Jetpack公式サイト上にも日本語の利用案内やサポートページが用意されています。日本語の文章も問題なくMarkdown変換可能です。 ◎ 対応 – 日本語の文章入力・変換に対応しており、プラグインUIも日本語翻訳されています。「WP Markdown Editor」は公式に27言語に翻訳されており、日本語で利用することができます。日本語環境でもダークモードやフォント設定など含め快適に利用可能です。

解説と詳細比較

1. GitHub Flavored Markdown(GFM)対応: JetpackのMarkdown機能は、基本的にCommonMark仕様に準拠しつつ一部拡張機能も備えています。実際、JetpackではMarkdown Extra相当の拡張が有効で、標準Markdownにはない表組みや脚注なども使用できます。たとえばテーブル記法や脚注記法もJetpackならそのまま書いてHTMLに変換できます。一方、WP Markdown EditorはMarkdown記法自体はサポートしているものの、GFM特有の拡張(タスクリストや絵文字記法など)について公にアナウンスされていません。基本的な見出し・リスト・強調などの記法は問題なく使えますが、表組みなど複雑な構文はJetpackほど手厚くサポートされていない可能性があります。公式ドキュメントにも対応記法の詳細は記載されていないため、必要に応じて手動でHTMLを併用する場面もあるかもしれません。

2. リアルタイムプレビュー: 執筆中のプレビュー機能は両者で大きく異なります。Jetpackの場合、ライブプレビュー用の専用ペインは提供されません。【プレビュー】ボタンを押して投稿全体を確認するか、ブロックエディタの場合はMarkdownブロックのツールバーからレンダリング結果を一時表示する程度です。編集画面上は終始Markdownのプレーンテキストを扱う形で、書いている段階でのリアルタイムな見た目確認はできません。これに対しWP Markdown Editorは、執筆エディタ自体がプレビューも兼ねるアプローチをとっています。プラグインを有効化すると通常のブロックエディタとは別のMarkdown専用画面で記事を編集しますが、余計なUIが排除された「ディストラクションフリー」な画面で、書式を反映した状態のテキストを確認しながら書けます。たとえば見出しを入力すれば文字が大きく太字で表示され、強調したい部分を**で囲めばその場で太字表示になる、といった具合に、リアルタイムに書式が反映されます。別ウィンドウを開いたりモードを切り替えたりせずに済むため、執筆効率の面で優れています。

3. Gutenberg(ブロックエディタ)との互換性: JetpackはClassic EditorとBlock Editorの両方に対応しており、特にGutenbergでは「Markdown」ブロックを追加して使用する設計です。Jetpackを導入後、ブロック追加からJetpackカテゴリのMarkdownブロックを選べば、その中でMarkdown記法が利用できます。一方WP Markdown EditorはGutenberg自体にMarkdown編集機能を溶け込ませる方針で、旧Dark ModeプラグインにMarkdown編集機能を後付けした経緯があります。有効化すると投稿一覧の各投稿に「Edit (Markdown)」というリンクが追加され、クリックするとIceberg由来のMarkdownエディタ画面が開きます。内部的にはブロックエディタ上で動作していますが、通常の段落ブロック等ではなく一つのテキストエリア的な画面でMarkdownを扱う形です。したがってGutenbergのブロック単位の編集にも支障なく共存できます。ただしClassic Editorプラグインとは相性が悪く、同時使用するとClassic Editor側が正常に機能しなくなる報告がありました。基本的にブロックエディタ環境での利用が前提と考え、Classic Editorはオフにするのが無難です。

4. プラグインの軽量性(パフォーマンス): Markdown機能のみの比較では、Jetpackは必要最小限の軽量プラグインとは言えません。Jetpack本体は多機能ゆえにファイルサイズも大きく、メモリ使用量も増えがちです。Markdownモジュール単体では大きな処理負荷はありませんが、Jetpack導入で他にも様々なモジュール(サイト統計や関連投稿など)が動作する可能性があり、サイト全体に与える影響も考慮する必要があります。特に「Markdown機能だけ欲しい」場合にはJetpackはオーバーキル(やりすぎ)との指摘もあります。対してWP Markdown Editorは機能が限定されている分、比較的軽量です。フロントエンド(サイト表示側)には余計なスクリプトやCSSを出力しないため表示速度への影響はゼロと言えます。管理画面上では、ダークモード用のCSSやMarkdownエディタ用のJSが読み込まれる程度で、Jetpackほどの重量級ではありません。ただしWP Markdown Editorも内部でIcebergエディタの一部を含むため、それなりのコード量にはなります。総じて、「既にJetpackを入れているならMarkdownモジュールを追加しても大差ない」「MarkdownのためだけにJetpackを新規導入するのは重い」 一方「WP Markdown EditorはMarkdown執筆に特化しているので追加負荷は小さいが、Jetpackほど最適化され洗練されているわけではない」と評価できます。

5. 更新頻度と安定性: 運用面では、JetpackはAutomattic社によって定期的(概ね毎月)にアップデートされています。WordPress本体のリリースや他プラグインとの互換性にも素早く対応しており、数百万サイトで利用されている実績からも信頼性は非常に高いです。大きな不具合が発生することは稀で、万一問題が起きてもフォーラムやサポート経由で改善が期待できます。これに対しWP Markdown Editor(無料版)は、ここ一年ほど更新が滞り気味です。2020年にDark ModeからMarkdown Editorへの改変が行われた後、無料版では目立った機能追加もなくメンテナンス中心となっています。実際、2024年以降のWordPress本体に対して「未検証」の状態になっており、将来的な互換性に不安があります。安定性の面でも、前述のClassic Editorとの衝突や、ユーザーから「プラグインを有効化してもMarkdown機能が使えない」といった誤解・苦情が寄せられている状況です。有料版では継続的な改善が行われている可能性もありますが、少なくとも無料版については開発が事実上停止状態である点に留意が必要です。

6. 無料版と有料版の差異: JetpackのMarkdown機能は完全に無料で利用できます。Jetpackプラグイン自体のインストール・利用に費用は不要で、Markdown機能も制限なく使えます(Jetpackには有料プランも存在しますが、それらはセキュリティバックアップや高速CDN等のサービスであり、Markdownには関係ありません)。一方、WP Markdown Editorは名前に「Markdown Editor」とありますが、無料版では肝心のMarkdown編集機能がロックされています。無料でできるのは管理画面の配色変更(ダークモード化)やエディタの外観設定程度で、Markdownで記事を書いて保存・変換する機能は含まれていません。実質的に有料アドオンとして提供されており、Markdownエディタを使うにはプレミアム版の購入が必須です。その価格は年間約50ドル(サブスクリプション)または90ドル前後の買い切りプランが提示されています。購入すると見出しや段落のMarkdown入力、ライブプレビュー、フォントやカラーのカスタマイズなどフル機能が解放されます。無料版と有料版で機能差が大きいため、導入の際は目的に応じて予算を考慮する必要があります。

7. 日本語での使用可否: どちらのプラグインも日本語環境で問題なく利用可能です。JetpackはWordPress.com系サービスの一部ということもあり、公式サイトや設定画面が日本語ローカライズされています。Markdown自体が言語非依存の記法のため、日本語の見出しやリストも正しく変換されます。WP Markdown Editorも有志により日本語翻訳ファイルが提供されており、プラグイン有効化時に管理画面表示が日本語になります。日本語特有の不具合(全角文字が原因の崩れ等)も特に報告されていません。ただし、WP Markdown Editorのチートシートやヘルプは英語ベースの可能性があるため、初めてMarkdown記法に触れる場合は日本語のMarkdown解説資料を併用すると良いでしょう。

参照リンク(公式サイト・情報源)

  • Jetpack公式サイト (Markdownサポート解説): Jetpack.com
  • Jetpackプラグイン公式ページ (WordPress.org): Jetpack – WP Security, Backup, Speed & Growth
  • WP Markdown Editorプラグイン公式ページ (WordPress.org): WP Markdown Editor (Formerly Dark Mode)
  • WP Tavernニュース記事 (Dark ModeからWP Markdown Editorへの変更経緯): WPTavern.com
  • その他参考: Markdownプラグイン比較記事(SitePoint)、有志ブログ記事など.