最新のWordPress環境で使用できる、軽量なMarkdown記法対応プラグインについて調査しました。現在ユーザーが使用中の WP Githuber MD を基準に、JetpackやWP Markdown Editor(WPPool製)、WP-Markdown(旧式プラグイン)以外の有力な選択肢をピックアップしています。候補プラグインそれぞれの主な機能、更新頻度、GitHub Flavored Markdown(GFM)対応の有無、Gutenbergエディターとの互換性、軽量性(動作の軽さ・不要スクリプトの少なさ等)、および公式ページやGitHubリンクをまとめて比較しました。なお、いずれのプラグインも基本的にUTF-8テキストを扱うため日本語コンテンツも問題なく使用可能です。
Markdown対応プラグイン比較表
プラグイン名(公式ページ) | GFM対応 | リアルタイムプレビュー | Gutenberg対応 | 特徴・軽量性の概要 | 更新状況(無料/有料) | ソースリンク |
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WP Githuber MD (現在利用中) | はい(タスクリスト等) | あり(編集+プレビュー画面) | 部分対応(独自エディタ提供) | 多機能オールインワン。必要機能のみ読込し動作。MDとHTML両方DB保存 | 2023年12月まで更新※2024/10にWP.org掲載停止(無料) | GitHub |
Markup Markdown | (標準的なMarkdown)※注1 | あり(エディタ内プレビュー機能) | 非共存(エディタ全置換) | Gutenberg/TinyMCEをEasyMDEに置換。投稿内容はMarkdownで保存し表示時Parsedown変換 | 活発(最終更新5日前)(無料) | WordPress.org |
Markdown Block | はい(Marked.js採用) | あり(SimpleMDEプレビュー等) | 完全対応(独自ブロック) | Markdown用のブロックを提供。入力をMarkedで解析し各種ブロックに変換。外部リソース不要で軽量 | 新規(v1.0.0初版2024年、1週間前更新)(無料) | WordPress.org / GitHub |
Ultimate Markdown | はい(Markedで複数方言対応) | 部分的(専用画面でHTMLプレビュー) | 完全対応(ブロックエディタ必須) | 輸入・変換特化:MDテキストからGutenbergブロックを即生成。専用「文書」管理画面でMD編集+プレビュー | 非常に活発(2024年11月 v1.20)(無料※Pro有) | WordPress.org |
Iceberg | はい(基本的なMD全般) | あり(MDに集中した画面) | 完全対応(ブロックエディタ上で動作) | 快適性重視:ブロックエディタをMarkdown対応の執筆アプリ風UIに変換。テーマ切替や豊富なショートカット、絵文字等対応 | 商用(\$49、2020年公開)(有料) | 公式サイト |
※注1: Markup MarkdownはParsedown(標準Markdown記法+一部拡張)で変換。テーブルなどGitHub拡張構文は未対応の可能性があります。
各プラグインの詳細と比較ポイント
WP Githuber MD
WP Githuber MDはGitHub Flavored Markdown (GFM) に対応したオールインワンのMarkdownエディタプラグインです。Editor.mdライブラリに基づくリッチな編集UIを提供し、MarkdownとHTMLを両方データベースに保存します(Markdownはpost_content_filtered
欄、HTMLは通常のpost_content
欄)。これによりプラグイン無効化時でも記事はHTMLで残り、再編集時にはMarkdownを復元できます。主な機能は以下の通りです。
- リアルタイムプレビュー付きMarkdownエディタ(エディタ画面とプレビュー画面の二窓)
- GFM拡張に対応(チェックリスト記法など)。標準Markdownに加えMarkdown Extraにも対応
- 画像貼り付け(クリップボードからの画像コピー&ペーストで自動アップロード)
- HTML→Markdown変換ツール(貼り付けたHTMLをMarkdown記法に変換)
- シンタックスハイライトやMermaid記法対応、数式(KaTeX/MathJax)対応
- スペルチェックやSEOキーワード支援機能まで搭載
Gutenbergエディターとの関係については、クラシックエディター同様に独自のMarkdown編集画面を提供する形で動作します。Gutenberg環境下でも有効化できますが、実質的にはブロックエディタのUIをMarkdownエディタに置き換えて使用するイメージです(「Gutenbergテキストエディタをサポート」と公式に言及)。投稿ごとにMarkdownモードのオン/オフ切替も可能です。
軽量性: 機能豊富な反面、エディタ用のJS/CSS(Editor.mdや各種拡張モジュール)を読み込むため管理画面上の負荷はそれなりにあります。しかし開発者によれば、投稿内容に応じ必要なスクリプトのみを動的に読み込む工夫をしており「不要なスクリプトは読み込まない」設計になっています。表示側では記事保存時にHTMLが生成されるため、閲覧時のパフォーマンスへの影響は最小限です。
更新状況: 7,000以上のサイトで利用され、2023年末まで積極的なアップデートが継続していました。しかし2024年10月にWordPress公式ディレクトリでセキュリティ上の問題により一時公開停止となっています。既知の脆弱性(XSSや任意ファイルアップロード)が指摘され最新版1.16.3で一部修正済みですが、完全修正のレビュー待ちです。現在でもGitHub上でプラグイン自体は入手・利用可能ですが、公式再公開までは慎重な運用が必要でしょう。
Markup Markdown
Markup Markdownは、ブロックエディタ(Gutenberg)もしくはクラシックエディタを丸ごとMarkdownエディタ(EasyMDE)に置き換えるタイプのプラグインです。有効化すると投稿編集画面がCodeMirrorベースのMarkdownエディタに変わり、ビジュアルエディタやブロックUIは無効化されます(※Markdownエディタとブロックエディタを同時に使うことはできません)。そのためGutenbergとの共存は不可ですが、「すべての記事をMarkdownで書く」と割り切る場合に軽量でシンプルな解決策です。
- エディタ: EasyMDE(シンプルなMarkdownエディタ)を採用。見出しや強調などの挿入ボタン、プレビュー切替(画面内にリアルタイムプレビュー表示可能)機能があります。UIはWP Githuber MDほどリッチではありませんが、必要十分な軽量エディタです。プラグイン作者自身「機能はこれでほぼ全て」と述べるシンプル設計です。
- データ保存: Markdown記法のまま記事内容をデータベース保存し、フロントエンド表示時にPHPのParsedownライブラリでHTMLに変換します。したがって投稿データは常にMarkdown形式で保持され、プラグイン停止時にはそのままではHTMLとして表示されない点に注意が必要です(逆に言えばMarkdownデータのポータビリティが高い)。なおParsedownは基本的なMarkdownと一部拡張(Footnotes等)をサポートしますが、GFMのテーブル等は未対応です。
- GFM対応: 標準ではGitHub風のタスクリストやテーブル記法はサポートされません(Parsedown Extraで表組み拡張程度)。ただしより高機能なパーサー(例えば
cebe/markdown
など)に差し替える改造は上級者なら可能です。
軽量性: 投稿画面では不要なWordPressエディタ資源を読み込まないため、UIは非常に軽快です。エディタ自体もCodeMirrorベースで比較的小型です。一方で記事表示時に毎回Markdown→HTML変換を行う実装のため、閲覧トラフィックが多いサイトではパース処理が負荷になる可能性があります(この点、静的HTMLを保存するWP Githuber MDより実行時コストは高い)。もっともParsedownは軽量で、記事をキャッシュするなど対策すれば問題は抑えられるでしょう。
更新状況: 2023年以降精力的に開発されており、直近でも「5日前」にアップデートされています。対応WordPressバージョンも広く4.9~6.8までテスト済みです。純粋にMarkdown執筆に集中したいユーザーにとって、有望なモダン代替となります。
Markdown Block
Markdown Blockは、Gutenbergエディタ用の「Markdownブロック」を追加するプラグインです。ブロックエディタの一部として動作するため、JetpackのMarkdownブロックと似た発想ですが、Jetpack不要でより軽量かつリアルタイム性に優れます。特徴は以下の通りです。
- 動作概要: Gutenbergのブロックメニューから「Markdown」ブロックを挿入すると、ブロック内部でMarkdownのテキスト編集ができます。編集にはSimpleMDE(シンプルなMarkdownエディタ。Markup Markdownと同系列)が使われており、書式ボタンやプレビュー機能を備えます。入力されたMarkdownは、クライアントサイドのMarked.jsで解析され即座にHTMLブロックに変換・適用されます。たとえばMarkdown中の見出しは自動的に
等の見出しブロックに、リストはリストブロックに、といった具合にリアルタイムで反映される仕組みです。このためプレビューも逐次ブロックに反映され、Markdownと出来上がりのブロック表示を行き来する煩わしさがありません。
- スタイル継承: 変換後の各ブロックは通常のGutenbergブロックとして扱われるため、その場でブロックごとのスタイル調整や再編集も可能です。目次ブロック機能もあり、見出しから自動生成されたTOCを折りたたみ表示できます。Markdown入力とブロックデザイン機能のいいとこ取りを狙った設計といえます。
- GFM対応: Marked.jsはデフォルトでGitHub Flavored Markdownをサポートしており、表(Table)やチェックリスト、打消し線なども使用可能です。実際に本プラグインでも表はコアのTableブロックに、チェックリストは箇条書き(チェック入り)ブロックに適用されます。
- 軽量性: 依存ライブラリ(SimpleMDE, Marked.jsなど)はすべてプラグインに内蔵されておりCDN等への外部アクセスは不要です。またMarkdown Blockが使われていない投稿ではライブラリを読み込む必要がないため、サイト全体への負担も極小です。変換後は純粋なブロックになるため閲覧時も追加スクリプトは不要です。
更新状況: 2024年に公開された新しいプラグインで、執筆時点の最新版1.1.0は1週間前に更新されたばかりです(WordPress 6.8.1まで対応)。導入サイトはまだ少ないですが、Gutenberg標準機能との親和性が高く、日本人開発者による積極メンテナンスも期待できる注目株です。
Ultimate Markdown
Ultimate Markdownは、他のプラグインとは一線を画す包括的なMarkdown統合プラグインです。単なるエディタ提供に留まらず、Markdown文書の管理・インポート・エクスポートや、Markdownからブロックへの即時変換など多彩な機能を備えています。開発元はWordPress向けプラグインを多数手掛けるDAEXT社で、無料版と上位のPro版があります。主な特徴:
- Markdown文書の一元管理: 管理画面に「Documents(文書)」メニューが追加され、ここで複数のMarkdown原稿を管理できます。エディタ+右側にHTMLプレビュー枠が表示され(Editor.mdではなく独自実装)、Markdown文書の新規作成・編集や複製・削除が可能です。この文書はデータベース内に保存され、のちに投稿に流用できます。フロントマター(冒頭のYAML記法でタイトルやタグなど設定)にも対応し、Markdown内に記事のメタ情報を記述可能です。
-
Gutenbergへの統合: 投稿編集画面のサイドバーに**「Import Markdown」「Load Markdown」「Submit Markdown」**という3つのパネルが追加されます。
- Import Markdown: ローカルの.mdファイルをアップロードすると、その内容から即座にブロックを生成した新規投稿を作成できます。複数ファイルの一括取り込みも可能で、他サイトで書いたMarkdownをWordPressにまとめて移行する用途に便利です。
- Load Markdown: 先述のDocumentsメニュー内に保存したMarkdown原稿を選択し、その内容をブロックとして読み込むことができます。一度書いたMarkdownテンプレートを使い回すようなケースにも対応しています。
- Submit Markdown: テキスト入力欄に直接Markdownを貼り付け、「変換」ボタンを押すと即座に現在の投稿エディタにブロックとして展開します。たとえば外部エディタで書いたMarkdownをコピペしてブロック化する際に役立ちます。
- 変換エンジン: Markdown→HTML(ブロック)変換には高速なMarked.jsを採用。MarkedはCommonMark系の実装で、「GitHub Markdown」「Markdown Extra」など主要なMarkdown方言に対応しています。そのためGFM拡張(チェックリストや表組み、脚注など)もほぼ網羅しています。変換はクライアントサイドで行われ、ブロック生成にはWordPressのネイティブブロックAPIを利用しているため整合性も高いです。
軽量性: 機能が豊富な分、プラグイン自体の規模は今回挙げる中で最大級です。しかし不要時に常駐するようなスクリプトはなく、基本は利用時にオンデマンドで処理が走る設計です。例えば通常の投稿執筆ではDocumentsメニューやサイドバーUIは控えめな存在で、サイト閲覧時には生成済みブロックが表示されるだけなのでパフォーマンス上の大きなペナルティはありません。Markdown文書を大量に保持するとデータベース容量は増えますが、テキストベースなので軽微です。
更新状況: 2021年リリース以降、頻繁にアップデートされています。2024年11月にVer 1.20が公開済みで、WordPress 6.8.1まで対応。サポートフォーラム対応やPro版開発も継続中で、信頼性・将来性の面でも安心です。無料版だけでも充実した機能を備えており、インポート/エクスポート用途やGutenbergとの併用を重視する場合、有力な選択肢となります。
Iceberg
Icebergは唯一の有料プラグインですが、洗練された執筆体験を提供するMarkdownエディタです。Rich Tabor氏らによって開発され、「ブロックエディタ上で動作するテーマ切替可能なMarkdownエディタ」という位置づけです。価格は約\$49と案内されています。
- コンセプト: 「WordPressの持つパワーと書き物アプリのシンプルさの融合」を掲げており、Gutenbergのブロック概念を裏で活かしつつもユーザーには極力意識させない、没入型の文章作成UIを実現しています。**「エディタテーマ」**機能により複数のカラースキーム・フォント・行間設定をワンクリックで変更可能で、好みの執筆環境にカスタマイズできます。
- 機能: Markdown記法サポートはもちろん、見出し階層インジケータ、段落の字下げモード、リアルタイムの文字数・見出しアウトライン表示、豊富なキーボードショートカット、絵文字入力支援など執筆を快適にする機能が多数盛り込まれています。プレビューは特別なパネルではなく、エディタ上でMarkdownを装飾しつつ表示するスタイルです(例えば太字は太字表示、見出しは大きな文字、といった具合に編集画面自体が最終結果に近い見た目になる)。ブロックエディタのUI(ブロック境界やツールバー)は大幅に簡素化され、**「文章だけに集中できるモード」**を提供します。必要に応じて通常のブロック編集機能にもワンタッチで切り替え可能です。
- GFM対応: 開発者ブログによれば、Iceberg内部でもMarkdownのパースにcommonmarkベースのエンジンを使用しているとのことです。表やチェックリストを含むGitHub風の構文にも対応しています(実際、Icebergを同梱した無料プラグイン「WP Markdown Editor」でもJetpackのMarkdownモジュールを利用してGFM対応していた経緯があります)。
軽量性: IcebergはReact製の高度なUIを持つため、決して「プラグインサイズが小さい」という意味での軽量ではありません。しかしそのUX上の効率性(快適さ)が評価されており、SitePointのレビューでは「非常に洗練されており、既存のブロックエディタにうまく馴染む。価格分の価値がある」と高評価を得ています。ブロックエディタを日常的に使い込みつつMarkdownで書きたいユーザーや、執筆体験そのものに投資したいユーザー向けのプレミアムな選択肢と言えるでしょう。
更新状況: 2020年の公開後、継続してアップデートが提供されています(機能追加やWordPress本体の変化への追随)。販売は公式サイト(useiceberg.com)で行われ、サポートフォーラム等も用意されています。なお、2021年には上述の無料プラグイン「WP Markdown Editor (Dark Mode改称)」にIcebergの一部が取り込まれた経緯がありますが、現在Iceberg本体は独立して有料提供されています。
その他の情報
上記以外にもMarkdown対応プラグインはいくつか存在しますが、メンテナンス状況や互換性に課題があるものが多いです。たとえばJetpackプラグインはMarkdownブロック機能を提供しますが、Jetpack自体が重厚であること・WordPress.com連携が必要なことから敬遠する向きもあります。またWP Markdown Editor(Dark Mode)は一時人気を博しましたが、2021年以降更新が停滞し最新WordPressでの動作保証がありません。WP Editor.mdもWP Githuber MDと同様のEditor.mdベースエディタですが、2025年4月に一時公開停止となっています。WP-Markdown(Mark Jaquith氏のMarkdown On Save等)も古く、既に開発終了と見られます(古いMarkdownプラグインの多くは「避けるべき」と評されています)。
その意味で、現在無料で入手できる最新の選択肢としては前述の Markup Markdown, Markdown Block, Ultimate Markdown が特に有力です。これらはそれぞれアプローチが異なり、以下のような使い分けが考えられます。
- 軽さ重視でシンプルにMarkdown運用: → Markup Markdown(全エディタをMarkdown化。ブロックエディタ不要な場合)
- GutenbergとMarkdownのハイブリッド活用: → Markdown Block(必要な箇所だけMarkdownブロック挿入。ブロックと共存)
- 既存Markdown資産やインポート重視: → Ultimate Markdown(他環境との連携、多彩なMD操作)
- 現行WP Githuber MDに近い使い勝手: → (継続利用する場合は)WP Githuber MD or WP Editor.md(共にEditor.md採用)※ただしセキュリティ留意
- 最高の執筆環境を求める: → Iceberg(有料だが操作性抜群)
以上、各プラグインの特徴と違いを比較しました。それぞれの公式ページやソースコードも参考に、ニーズに合ったMarkdownプラグイン選定の一助になれば幸いです。
参考文献・情報源: WP Githuber MD開発者GitHubリポジトリ、プラグイン公式ページおよび開発者ブログ、有識者による比較記事、WordPressフォーラム情報等。各所に引用したように、信頼できる最新情報を基にまとめています。脚注のリンクから詳細もご確認ください。